結び紐のない式正冠

マゲに固定する、平安時代以降の日本人の冠の正式な着け方です。これは源頼朝徳川家康の肖像画などでも分かります。ただし現代人はマゲが無いので冠を着ける際には仕方なくひもで結んでいます。

顔の横にくる余分な取り付紐がありませんのでお顔が前後で分断されずすっきりときれいに見えます。また一番の見せ場である胸元に大きな結び房が下がることがなく、全体の造形をもいっそう美しく表現します。単に冠を接着剤で接着してあるのではなく、実際に写真のような構造にしてあります。この方式で冠を固定するためには、頭の大きさと冠の大きさ、冠の形とマゲの位置、巾子の差込穴とマゲの穴の位置、を正確に合わせる必要があり、頭師・結髪師・冠の作者が三位一体とならなければ絶対に不可能な取り付け方法です。デッサンに基づく当工房のおひな様だからこそできる細部へのこだわりです。尚、冠の後ろの纓(えい)は(上写真や下写真左のように)正式には二枚です。

1:冠の位置と高さに気を遣いながらマゲを結います。笄(こうがい=串)の通る穴の位置も決めます。

2:上から冠を載せます。冠が頭よりも「はみ出ない大きさと位置」に特にご注目ください。

3:横から笄(串)を通します。冠底面の高さ(厚み)が自然で(これを薄額=うすびたいと呼びます)、笄(串)自体も細く全体の造形を損ないません。

式正冠は一般的な冠は
お顔と衣裳がすっきり見えます。ちなみに冠の後ろに立つ纓(えい)は、頭巾の結び目から伸びる2枚の布が形を変化させたものなので2枚が正式です。既製品の冠を使用するために取り付紐が必要になります。

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