令和の逸品飾り

あえて屏風を置かず、「余白の美しさ」を活かす趣のある飾り方です。

「お子様の(一生涯の)ひな人形」に原点回帰

七段飾りなどの豪華絢爛な飾りが主流だった昭和40年代以降は大きな物や付属品、お道具類も多く、「大事なものだから触っちゃダメよ」とお子様のひな人形を大人が飾り付けをせざるをえず、忙しさや大変さもあり、次第に飾らなくなってしまったという声をよく耳にします。主役であるはずのお子様は触ることもできず、愛着もあまり湧きませんし見るだけですから「単なる大きな置物」となってしまっていました。

せっかく贈られた人生で最初の大きな贈り物なのですからこれではさすがにもったいないです。より盛大により華美になり過ぎたひな人形の飾り方は、令和に入り「ひな人形本来の役割」に合致したお子様主体の「 よりシンプルな飾り方」に進化しています。

↑一番左が平成元年頃まで主流だった七段飾り、その右が平成20年ころまで多かった三段飾りです。右四点はお殿様とお姫様の二人だけで飾る親王飾りです。右下が最近高い評価を得て徐々に割合が増えてきた「令和の逸品飾り」です。

 

ところで「ひな人形本来の役割」とは何でしょうか。

一、小学校へ上がるまで

親王をご両親に見立て、毎日の挨拶、手洗いなどの習慣、花器に花を活けて自然の美を感じ取る感性、このような人生において重要な事柄を小学校に上がるまでに身に着ける教材としてご活用できます。

二、結婚・独立するまで

毎年毎年ひな祭りには自ら飾り、各年齢に合わせて家族でパーティをしてお節句を毎年の恒例行事にします。ひな人形の飾ってあるときの親子の語らいの場としていっぱい思い出を作りましょう。

三、故郷から離れても

嫁ぐときもひな人形と一緒です。将来、遠く生家から離れて暮らしてもご両親を尊敬し、ご両親からの深い愛情を感じながら一生ひな祭りには我が子のひな人形と共に自分のひな人形を飾ります。

四、生涯を全うするまで

子どもたちが独立しても、一年一年節句を迎えひな人形を飾るたびに故郷を想い、一つの節目としてこの一年を振り返り反省し、次の一年の目標を定め、ゆったりと時の流れを楽しみながら白寿を目指します。

 

以上のように、ひな人形は一生涯飾るものです。初節句で贈られ自分と同じだけ年月を過ごし共にし兄弟のようなものです。

 

長く飾るために重要なこと

何十年と飾るためには重要なことが2点あります。

一、小学校へ上がる頃には自ら飾れるように、小さなお子様でも持って運べる重量と大きさ。

「三つ子の魂百まで」という言葉があります。幼いころの性格は年齢を重ねても変わらないということですね。幼いころに性格が形成され、ある意味その人の人生を決めてしまう可能性があるということです。

お節句は教育です。最初の一二年はご両親がお子様の健やかな成長を願って飾りますが、会話ができるようになったら、お殿様とお姫様をご両親に見立て、毎朝起きてきたらひな人形に向かって目を合わせ「おはよう」夜ベッドに行くときは「おやすみなさい」の挨拶を身に付けるよう教えます。幼いうちはご両親が導いて積極的に手に持たせてあげるといいですね。「大事なお人形を持つから最初に手をよく洗おうね」と手洗いの習慣も身に付けます。「お人形を持つ時はここを持ってね、顔は触らないでね。」などとアドバイスをしながら自分で飾ることが出来るようにしてあげる。まだ上手に飾れなくてもOKです。少しご両親が手直ししながら親子の時間でゆっくり飾りましょう。きっと次の年には自分で飾ることをワクワクしながら待ち望むことでしょう。

片づけるときもゆっくりとお子様のペースに合わせて時間をかけてしまいましょう。物を大切にする心と、箱の形状に対して入れるものの大きさなど「空間認識能力」も養うことができます。

お子様が一人で持ち上げて運べるサイズであれば以上のようなことももちろん可能ですし、自らすすんで飾る習慣が身に付きやすくなります。お子様が自分で飾る習慣を身に付けることはこれから何十年と繰り返されるお節句に必ず出して飾ることの重要な要素となります。

二、感性豊かな大人の女性が楽しむことができる完成度と控えめな奥ゆかしさ。

お子様も中学生くらいになりますと大人の感性で物を見るようになります。見た目豪華なもの派手なものは「その見た目」がすべてであり想像力を働かせる余地はなく、すでに完成形であるために「単なるひなの時期の飾り物」となってしまいがちです。

何歳になっても新しい発見があると飽きが来ません。例えば15歳の春、いつもの年のようにおひな様を自分で飾る年があったとします。ふと横からおひな様を見て「あれ、お殿様は背筋をピンと伸ばして男らしくお姫様は体全体が中心から前へずれていて少し前かがみになっているなあ。女性らしい感じがしていいなあ」など気付きがあります。またある年は「あれ、お姫様の扇を持っている両手は少し顔に近づけているんだなあ」などと気付くことがあるかもしれません。50歳くらいになって「ああ今までなんとも思わなかったけど、この柔らかい丸い形を出すために底面は床面に吸い付くくらいに磨いてあるわ」などです。もちろん、これは一例ですから他にも色々な気付きがあるかもしれません。

つまり、中心になる人形自体にさりげなく高度な技術が埋め込まれている必要があると同時に、ひな人形が引き立つように周りはできるだけシンプルにしてある必要があります。

「令和の逸品飾り」の特長とは

令和の逸品飾りの一番の特徴は「びょうぶが無いこと」です。

最小限必要なもの(部品)だけで飾るのが「令和の逸品飾り」です。下に赤い毛せんは必ず敷きます。赤い色は古来より魔除けの意味がありまた神聖な場所であることも意味します。人形の横にはその神聖な領域を確保し照らすぼんぼり(または燭台)を置きます。ぼんぼりは無くてもかまいませんがあまり殺風景に感じるならば置いたほうがよいでしょう。これだけですから片づけた時の大きさも非常にコンパクトで重量も軽いです。

同じ人形を三種類の飾り方で比較してみました。一番左が「収納飾り」中央が「金びょうぶ平飾り」右が「令和逸品飾り」です。

収納飾りはびょうぶや台にも絵柄をあしらい、両側には造花を置き豪華絢爛さをアピールする飾り方です。これに対し右側の二つのセットは一見シンプルな飾り方です。
正面から見た時に、びょうぶ飾りの場合は四角いびょうぶの枠に囲まれた限られた飾り(世界)となります。令和の逸品飾りは びょうぶを置かないので、背景周囲すべてがひな人形の飾り(世界)の一部として捉えることができます(床の間効果)。自由でゆったりとした時空間の広がりを感じることができます。びょうぶは付きものという既成概念にこだわる必要はありません。そもそもびょうぶの役割のルーツは後ろを見えなくする衝立であり風避けだからです。びょうぶが無いほうが美しいと感じれば無くてもまったく問題ありませんし、置いたほうがよく見えるということでしたら置いてもよいのです。置く場合は絵柄がないほうが中心になる人形を邪魔しませんから金びょうぶが最適ですね。

最高の贅沢、静と動 究極の美を追究

ひな人形を飾った時の美しさには『豪華絢爛の美』『静寂・余白の美』の二種類があります。

『豪華絢爛の美』とは、西洋の絵画で例えればルネッサンス以降多くの作品にみられる びっしりと画面を埋める技法が特徴であり、ひな人形においては屏風や台にも装飾を施し外見的なインパクトを重視した飾り方(収納飾りなど)です。

『静寂・余白の美』とは、物を豪華に増やして華やかに美しさを見せるのとは対照的に、あえて余白を残すことでそこにあるものを心で感じるという考え方です。見る人の数だけ見方が無限に存在し、豪華な飾り方とは一線を引く奥深さ、趣などを持たせる飾り方(令和の逸品飾り)です。

逸品飾りには「想像の余地が残る」という魅力と「作品の核心部分をより印象的に見せる」という二つの魅力があります。

「白紙も模様のうちなれば心にてふさぐべし」江戸初期の絵師土佐光起の言葉です。
作品において不必要な描写を削ぎ落すことで白紙(余白)を作ります。その白紙さえ描写以上の描写とする、日本独特の感性を生かした技法を表現した言葉です。

「素を遺すという、あの墨絵の余白が、そのまま空になり、水になり、雪になる。あの神秘不可思議は東洋人のみ知る恍惚境だ。」日本画家、横山大観の言葉です。
余白の美、引き算省略の美には、茶道・俳句の世界でも表現されています。日本庭園には水を感じさせるために水を抜く「枯山水」などの例もあります。

「無」を作ることにより「無限」を表現する。まさに「静と動」の世界です。

逸品飾りとは、繊細かつ控えめでありながら、どこか筋が通った主張を感じる独特な空気感や趣が、余白の余裕とともに美を心に感じさせる飾り方です。奥深い本物の贅沢をご堪能ください。

「令和の逸品飾り」の例

「花器」の重要性

令和の逸品飾りには、向かって左に生きている植物(花や葉)を置いてお飾りになることをおすすめしています。職人の手によって作られたお人形はすばらしい造形美ですが、ある意味「張り詰めた緊張感」があります。自然の(植物の)造形や色彩にはそんな緊張感を和らげる効果があります。それ以外に三つの重要な意味があります。

一、子孫繁栄を願う。

水を入れた花器に生きている植物を活ければすぐに根を出したりつぼみがほころんで花を咲かせたりします。植物は常に成長し花を咲かせて実を結び次の代を残します。この強い生命力が一族繁栄を願う心に通じます。

二、自然とのふれあい。

野に咲く草花を花器に飾ることを通して、自然の大切さや生き物を大切にする心を育みます。幼い時に美しいものを美しいと感じる豊かな感性を育む。これらはお子様の一生の財産となるはずです。

三、親子のふれあい。

お子様と会話ができる年頃になったら、ご両親が手伝いながら積極的にお人形を両手に持たせ、自分で飾る習慣が身に付くように導きます。最初はうまく飾れませんがそれでもOKです。「上手に飾れたねえ」この一言で自分で飾ったという達成感を感じます。手に持たせる時は「大事なものだから先に手を洗おうね」と手洗いの習慣が身に付きます。「今日はおひな様に飾る花を探しにいこうね」暖かい日には親子で手をつないで散歩に出かけます。道端に咲いている花や葉をつんで「これきれいだからおひな様に飾ろうね。おひな様もよろこぶよ」と家に持ち帰り花器に活けます。やがて枯れて汚れますから「きれいに掃除して、また花を探しにいこうね」きれいにする意味が分かると同時に、また散歩に行けるというワクワク感が増します。「春がそこまで心わくわくひな祭り」嫁いでからは、子どもの頃のひな祭りの思い出とご両親とつないだ手のぬくもりがすっとよみがえりご両親への感謝を感じる、これが節句の本来の意味です。

ひな人形には「造花」が付いていることが多かったのですが、「造花」には上記のような意味はございません。ある意味「お節句の本質」が詰まった「花器」をぜひお飾りいただくことをお勧めします。花器はセットに付属していますが、ご家庭にある花器をご利用いただいても問題ございません。

最後に

同じ人形で比較したとき、仮に令和の逸品飾りが100,000円であるとすれば金屏風飾りは約120,000円前後、収納飾りは収納台のびょうぶの種類にもよりますが約170,000円前後になります。

このように「お子様主体の飾り方」であり、「趣のある飾り方」であり、「コストパフォーマンスの高い飾り方」でもある逸品飾りも、ぜひ選択肢の一つに加えていただければ幸いです。

 


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